2010年02月19日

[論文] Akerlof and Dickens(1982) "認知的不協和の経済学的帰結"

行動経済学のレポートで使った論文をレビューしていこうと思います。


Akerlof and Dickens "The Economic Consequences of Cognitive Dissonance" American Economic Review, 1982


心理学でよく知られる、認知的不協和(Wikipediaより:人が自身の中で矛盾する認知を同時に抱えた状態、またそのときに覚える不快感)について経済学的にモデル化した論文。また規制の導入により不協和を解消させ、厚生が改善されることが示されている。


具体的には、安全な仕事と危険な仕事があり、後者には安全装置を買うかどうかという選択肢が後から加わる、というモデルである。モデルの特性は、1.信念(belief、ここでは危険を認識することによる「怖さ」)からも効用が発生する、2.信念はコントロールできる、3.が1度持った信念は変えられない、という3つである。通常信念はBayes' ruleによって決定されるので(情報があれば)コントロールできないし、そこから効用は発生しない。


このモデルの設定では、労働者は「『怖さ』を認識するコスト」か「安全装置を外すことによるコスト」のどちらかを負担しなければならない。「怖さを正確に認識し安全装置をつける」という行為はbeliefと一貫性がなくなるので行われない。このコストを補償するために賃金は上昇、労働供給は少なくなる。


厚生を改善する方法として、安全装置導入を法的に義務付ける、という方法がある。安全装置が義務となれば、「危険と認識していない自分が安全装置をつけるのはおかしい!」という不協和はなくなる(誰もが安全装置をつけなければならないので)ので、負担するコストが少なくなる。結果、賃金が下がり雇用が上昇、経済全体の厚生が上昇する。


筆者はさらにこのモデルはイノベーション、広告、社会保障、犯罪にも適用できるのではないかと述べている。


要約(意約):自由にすると、「俺怖くねーからこんなん(安全装置)つけねーよ!」って輩が現れるので、義務付けも大事。


感想:なかなかおもしろいモデルで、心理学でも注目されるようにいろいろな問題に適用できそうだ。その後の展開が気になるが、あまり聞かないような気がする。(この論文自体の引用数は多いのですが)
posted by とも at 02:18| Comment(2) | TrackBack(0) | 経済学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
シートベルトとか?
Posted by fearon at 2010年02月19日 08:32
シートベルトは好例ですね。各種保険やコンドームも例になります。
Posted by とも at 2010年02月19日 11:23
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/141562231

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。