2010年02月26日

[メモ]教育・職業訓練の経済学

引き続き"The Economics of Imperfect Labor Markets"を読み進めています。ch.8のeducation and trainingを読んだメモをまとめます。


・教育も投資の1つなので、政府が補助をするには何らかの「市場の失敗」がないといけない。以下が考えられる
-1.資本市場の不完全性…今お金がなくて学校に通えないが、借りられない
-2.個人のリターン<社会的リターン…教育の外部性が社会的リターンを大きくする
-3.教育の意思決定から結果が出るまでのタイムラグが長い。
-4.ホールドアップ問題
・OJTは雇用保護政策と関係性が深い。保護が強くなるとOJTが増える。
・競争市場では、一般的訓練は労働者が、企業特殊的訓練は企業が費用を負担する。
・しかし、実際は一般的訓練でも企業が負担していることが多い。
→買手独占にあるのではないか。(Accemoglu and Pischke)
・教育効果の実証は個人の能力の効果を排除する必要がある。
(低い能力の人が教育が短く、高い能力の人が長い場合、そのまま推定すると効果を課題評価してしまう)
→しかし、このバイアスは少ないとの実証結果も
・訓練は賃金を上昇させる(企業が費用を負担したときのみ、との結果も)

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2010年02月23日

[論文]Ishida(2006) "Optimal Promotion Policies with the Looking-Glass effect"

Ishida,J "Optimal Promotion Policies with the Looking-Glass effect" Journal of Labor Economics, 2006


"Looking-Glass effect"(鏡映的自己)とは、心理学の概念で、「他者の言動を通じて自分を理解する」ということである。人間、自分とは如何なる者か自分ではわからないことも多く、他者の目を通して理解する、というわけです。この"Looking-Glass effecgt"を昇進制度に応用してみたのが本論文になります。


playerは上司と部下で、部下を昇進させるかどうかを考えます。部下は自分の能力はわからず、上司のほうがより情報を持っています。部下は上司の指示(昇進、降格、そのまま)を通じて自分の能力を読み取り、それに応じて仕事をします。自分の能力が低い(生産性が低い)とわかると努力水準が少なくなります。


このような状況では、やる気を起こさせる(boost self-confidence)ために、昇進政策が利用されることになります。具体的には、上司がより情報を持っている場合、昇進/降格のラインが低めになります。低い能力でも昇進できる(降格しない)ことになります。何でもわかっている上司に降格を言い渡されるのはつらいので、上司もなかなか言えないのです。また、以前にどんな職だったか(能力が判別しやすいものだったか)も重要になります。上級の職は能力がはっきり分かれると考えられるので、これにより階級組織で降格が少ない理由を説明しています。


要約(意約):「次あいつ選ばなかったらやっぱ自信なくして落ち込むだろうなぁ…昇進させてやろうかなぁ…」


感想:非常に簡潔でわかりやすいモデルで、感銘を受けました。多かれ少なかれこういうことは日常あると思うので、implicationも非常に多いと思います。


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2010年02月20日

[メモ]最低賃金について:経済学的理論と実証

"The Economics of Imperfect Labor Markets"を読み進めています。今日はch.2の最低賃金のパートを読んでのメモを簡単に記していきます。


<最低賃金の国際比較に関して>
単純比較にはあまり意味がないので、以下のことに留意する必要があります。
・最低賃金/平均賃金、と平均に対する割合を用いる(Kaitz index)。medianでも良い。どちらも一長一短。
・税金の影響を考慮。税金を引いたnetでの最低賃金を考えるのが望ましい。
・最低賃金でカバーできないinformal sectorの割合を考慮。
(・時系列の場合はもちろん物価水準を考慮)


<最低賃金の役割:理論>
・競争市場では最低賃金は失業を増やす。(補足:最近ここが強調されすぎな気がする)
・市場の不完全性がある場合、最低賃金設定により賃金も雇用量も上昇する可能性がある。
-1.企業に独占力がある場合(買手独占)
-2.Job-searchに何らかのコストがかかる場合(採用コスト、サーチコストなど)
 -最低賃金の設定がサーチ努力水準を高め、賃金も雇用量も上昇する可能性がある。
・最低賃金が従業員の教育投資による生産性向上を促す可能性がある。


<最低賃金に関する実証結果>
・企業レベルのデータ:最低賃金は基本的にnegativeな効果。特に若年層で顕著。
・最低賃金の上昇はinformal sectorの賃金を上昇させる。
・自然実験による実証:Card and Kruegerのfast food店における実証。positiveな影響を示唆。論争多し。
・Worker historyを用いた実証:negativeな結果もpositiveな結果も出ている。


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2010年02月19日

[論文] Akerlof and Dickens(1982) "認知的不協和の経済学的帰結"

行動経済学のレポートで使った論文をレビューしていこうと思います。


Akerlof and Dickens "The Economic Consequences of Cognitive Dissonance" American Economic Review, 1982


心理学でよく知られる、認知的不協和(Wikipediaより:人が自身の中で矛盾する認知を同時に抱えた状態、またそのときに覚える不快感)について経済学的にモデル化した論文。また規制の導入により不協和を解消させ、厚生が改善されることが示されている。


具体的には、安全な仕事と危険な仕事があり、後者には安全装置を買うかどうかという選択肢が後から加わる、というモデルである。モデルの特性は、1.信念(belief、ここでは危険を認識することによる「怖さ」)からも効用が発生する、2.信念はコントロールできる、3.が1度持った信念は変えられない、という3つである。通常信念はBayes' ruleによって決定されるので(情報があれば)コントロールできないし、そこから効用は発生しない。


このモデルの設定では、労働者は「『怖さ』を認識するコスト」か「安全装置を外すことによるコスト」のどちらかを負担しなければならない。「怖さを正確に認識し安全装置をつける」という行為はbeliefと一貫性がなくなるので行われない。このコストを補償するために賃金は上昇、労働供給は少なくなる。


厚生を改善する方法として、安全装置導入を法的に義務付ける、という方法がある。安全装置が義務となれば、「危険と認識していない自分が安全装置をつけるのはおかしい!」という不協和はなくなる(誰もが安全装置をつけなければならないので)ので、負担するコストが少なくなる。結果、賃金が下がり雇用が上昇、経済全体の厚生が上昇する。


筆者はさらにこのモデルはイノベーション、広告、社会保障、犯罪にも適用できるのではないかと述べている。


要約(意約):自由にすると、「俺怖くねーからこんなん(安全装置)つけねーよ!」って輩が現れるので、義務付けも大事。


感想:なかなかおもしろいモデルで、心理学でも注目されるようにいろいろな問題に適用できそうだ。その後の展開が気になるが、あまり聞かないような気がする。(この論文自体の引用数は多いのですが)
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2010年02月13日

冬学期、無事終了!

行動経済学のレポートも何とか提出することができました。これで冬学期は終了!最後の3週間ほどはまさに嵐のように過ぎ去っていったような気がします。応援してくださったみなさん、ありがとうございました!

とりあえず数日はいろいろ整理して、新たな一歩を踏み出していこうかと思います。

posted by とも at 01:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月05日

The Economics of Imperfect Labor Markets

"The Economics of Imperfect Labor Markets"を購入しました。日本の労働市場は完全競争とはほど遠く、様々な規制が張りめぐされています。「労働市場を規制緩和せよ」と言ってもどれから手をつけていいかわからないくらい複雑です。ある規制がどのような意味を持つのか、また規制間の相互関係がどうなっているのかを勉強する必要があると思い、購入。春休みの課題とします。


目次は以下の通り。興味のあるとこから読んで行っても良さそうなので、Minimum wagesとWorking Hoursあたりから読もうと思います。

1. Overview
2. Minimum Wages
3. Unions and Collective Bargaining
4. Payroll Taxes
5. Regulation of Working Hours
6. Retirement Programs
7. Family Policies
8. Education and Training
9. Migration Policies
10. Employment Protection Legislation
11. Umemployment Benefits
12. Active Labor Market Policies
13. Institutional Interactions

しかし、労働経済の守備範囲は幅広いなぁ…

(※労働経済のレポートは無事かわからないけど終了!)
posted by とも at 21:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月04日

期末テスト:ミクロ計量経済


i.multinominal logit推定について。結果の解釈。
ii.Tobit modelの説明と結果の解釈。
iii.IVTobit modelの説明と結果の解釈。


Binary choiceのPanelデータに関する問題。

IVTobit(操作変数を使うTobitモデル)やPanelにおけるBinary choice(二項選択モデル)など、なかなかコア科目ではマニアックなところから出題されましたが、だいたいできたと思います。

これでコアコースの試験は全て終了!まとめは後日いろいろ書きたいと思います。
posted by とも at 21:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月02日

期末テスト:ミクロ経済

1.Subgame perfect, Perfect Bayesianなど均衡概念について。
2.投資決定に関するSignalingモデル。
3.労働契約に関するPrincipal-Agent問題 with Limited Liability。
4.一方のコストがわからないベルトランモデル。

シンプルな問題だったのですが、あまり出来はよくありませんでした。。特に2はなぜか勉強していなかったという大問題が発生。うーん。

ミクロマクロは終了しましたが、あと3日で計量と労働経済が残っています。疲弊した脳がどこまで復帰するか、というところ。
posted by とも at 20:09| Comment(4) | TrackBack(0) | 経済学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月01日

期末テスト:マクロ経済

テスト1発目、マクロ経済のレビュー。

1.ベルマン方程式。効用関数はlog、生産関数はコブダグラス。消費する主体が2人で、ナッシュ均衡となる消費量などなどを求める問題。
2.サーチ理論。といっても単純なベルマン方程式の問題で、3種類の賃金が降ってくる可能性があり、acceptすれば一生その賃金がもらえる、という状況。
3.ニューケインジアンモデル。NKPCと動学IS方程式が与えられていて、生産性ショックが与えられた時の生産量とインフレ率の動きをごりごり計算する。

だいたいできたと思います。苦手(というより、興味が薄い…)のマクロが悪くない結果となったので、安心です。明日はミクロ!

posted by とも at 22:44| Comment(1) | TrackBack(0) | 経済学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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